インタビュー実施日:2023年8月10日(木)
※勤務先、所属、役職等はいずれもインタビュー当時のものとなっております。
原:2019年卒の原です。自己紹介を含め、卒業後のキャリアや現在のお仕事について教えてください。
池田:1989年卒の池田です。現在は大和証券株式会社で専務取締役(グローバル・インベストメント・バンキング副本部長)として業務に取り組んでいます。卒業後、大和証券株式会社に入社し、リテール営業を2年経験した後、MBA留学生として海外へ派遣していただきました。アメリカのシカゴに2年ほどいて、当時はマイケルジョーダンもシカゴブルスに在籍していたので、最高の時期にシカゴに行くことができました。
留学が終わった後は日本に戻り、今で言うグローバル・インベストメント・バンキング本部で4年ほど引き受け関連の業務を経験した後、大和証券のニューヨークに6年半ほど駐在しました。
帰国後は経営企画部に5年いた後、グローバル・インベストメント・バンキング本部に戻り、M &Aのアドバイザリー業務に取り組みました。
その後、ロンドンの大和証券に転勤となり、(ロンドン滞在期間)後半には現地法人の社長というポジションに就かせていただきました。帰国後は海外ビジネス全般を担当し、現在(グローバル・インベストメント・バンキング副本部長)に至ります。
原:元々、金融業界に関心はあったのですか?
池田:父親が銀行に勤めていたということもあり、最初から金融とかに興味はありました。金融業界の中でも様々な業態がある中で、入社した1989年あたりは丁度バブル真っ盛りの頃でした。その中でも証券会社は勢いがありました。
また、小さい頃にアメリカに住んでいたこともあって、海外で働く機会が欲しいという想いもありました。大和証券は昔から海外ビジネスに力を入れていて、証券会社の中でもここが一番、海外業務のポジションにつける可能性が高いかなと考え、志望したというような感じでした。
原:ここからは学生時代のことをお聞きしていきたいと思います。高校生の頃、慶應大学へ進学しようと考えた理由やバスケ部へ入部しようと考えた理由は何だったのですか?
池田:そもそものバスケットボールとの出会いは、幼稚園から小学校3年ぐらいまで住んでいたロサンゼルスでした。近所の友達の家にバスケットボールのリングがあって、ストリートバスケットのように毎日いつでもバスケができる恵まれた環境でしたので、自然とバスケが好きになりました。日本に帰国してからもバスケットを続けたかったのですが、当時日本にはミニバスの文化があまり普及しておらず入るチームもなく、結局中学でバスケ部に入り、以降中・高・大と続けていくこととなりました。
慶應を選んだ理由は大きく2つあります。ひとつは元々親族で慶應出身者が多かったこと。もうひとつは高校時代に慶應大学バスケ部の方々と関わる機会があり、刺激を受けたことでした。
高校は東京都の武蔵高校に進学したのですが、この学校はいわゆる進学校で、スポーツにはあまり力を入れていませんでした。ただ私が入学するもっと前はインターハイの常連校で、その当時チームをインターハイ出場へ導いたコーチが私達に指導をして下さり、またその方が実は慶應大学バスケ部のコーチを一時期やっていたという縁がありました。そのような繋がりから、慶應大学バスケ部が武蔵高校の体育館を借りて練習をする機会があり、練習をよく見学させてもらい親近感のようなものが自ずと湧いていました。当時、慶應は1部リーグに所属している強い大学のチームだということは知っていましたし、そういう意味でこのようなチームでバスケがしたいという思いが強くなっていきました。
高校時代はインターハイに出るようなレベルではなく、東京都でもせいぜいベスト16ぐらいに入るのかどうかぐらいのレベル感でした。ただ慶應もインターハイで活躍しているような選手は一握りで、大学に入ってから練習して活躍している選手が沢山いました。まさにそういったチームでやりたいと思い、受験は慶應一本に絞り、最終的には慶應に合格することができました。
江畑:学生スタッフの江畑です。高校時代、慶應大バスケ部に抱いていた印象と実際に入ってみて感じた印象に違いなどはありましたか?
池田:印象とは少し異なるかもしれませんが、所属するリーグが変わっていたことが大きなギャップではありました。先ほども言いましたが、受験を検討していた当時、慶應は1部リーグにいたのですが、入部した段階では3部リーグまで落ちていたのです。ここに関してはイメージしていたものとはだいぶ違いました。
それ以外のところで言うと大きなギャップはなかったです。高校生の頃から感じていたチームとしての連帯感や部員・スタッフ全員の総合力で戦っていくというスタイルが具現化されていると感じました。改めて振り返っても慶應大学を選び、そして体育会バスケ部に入って本当に良かったと思っています。
原:慶應特有の魅力として、「早慶戦」という舞台があると考えているのですが、池田さんにとっての早慶戦とはどのような存在でしたか?
池田:個人的には「悔いの残る舞台」として記憶に残っていますね。
当時早稲田の方が慶應よりも断然レベルが高い中、2年生の時に勝利を経験することができました。3・4年生では試合の出場機会も増え、早慶戦に賭ける思いが一層強まり、勝利を目指したのですが、残念ながら結果は連敗となり、上級生として早慶戦の勝利を味わうことはできませんでした。これは今でも悔しい思い出ですね。
一方で早慶という良きライバル校がいること自体が大きな財産でもあると感じています。戦う時はもちろん完全に敵同士ですし、「絶対に負けたくない」と思いながら対峙してきました。ただ、試合を離れると他大学以上に良き友として仲が良く、今でも早稲田の同期と飲みに行くことがあります。これもまた早慶特有のいいところなのかなと思います。
原:現在、大企業の経営に携わられている中で、学生時代の経験が組織運営やマネジメントに活きている部分はありますか?
池田:バスケットボール部での活動を通じて人として、特に精神面では本当に成長できたなと思っています。「限られた戦力で体格や技術で勝る上位校に勝利を収めていく」という経験は社会に出てからも活きていると感じます。先ほども触れましたが、慶應には他大学のように高校時代から全国で活躍してきた選手が揃っているという状況ではありません。そのような中、各大会で結果を残せてこられたのは、やはり「チーム力」だったと思います。一人一人の力を単純に足し合わせるだけでは勝つことは難しいのですが、それぞれの力を掛け合わせていくことでチームとしての力を極大化し、強い相手に勝利するといったことを経験できたことは大きな財産になっています。
社会に出てから様々な業務に携わってきましたが、やはりチーム単位で動くことが殆どです。高い目標を達成するためには、課題を共有しチーム力を最大化させていく、そのようなプロセスは慶應バスケ部時代の経験がとても活きていると感じます。
例えば、M&Aの案件を獲得したい時、様々な工夫を凝らして競合他社と差別化を図る必要があります。その時に「何故大和証券なのか」について、個人で考えるよりもチームで意見を出し合い議論していくことが重要です。そして案件を獲得した時の喜びや達成感は大学時代に試合に勝利した時と同じ気持ちであり、一連の過程は慶應バスケ部時代の経験と重なります。
原:チームで動くという点では部活動も企業での業務も通ずる部分があるのですね。
池田:あとはネットワークの点でも、学生時代の人との繋がりがとても活きていると感じます。これはバスケットボール部に限った話ではないと思いますけど、体育会出身だということや慶應のOBというだけで急に親近感が生まれるのですよね。
海外にいた時も三田会(慶應のOB組織)の組織力には驚きました。ニューヨークやロンドンにもそれぞれに三田会があり、ロンドンの総会には大体400人くらいは集まっていたと思います。国外でもそれだけのOBが集まってくるという結びつきの強さは社会に出てからもとても活きている気がしますね。
江畑:若い世代の人ほど「チームで」という考えよりも、「自分の力で」という意識が強くなってしまいそうな印象を持っています。その中で池田さんのチームファーストの精神は学生時代に築き上げられたのですか?
池田:チームで力を発揮することの重要性は先ほどから話している通りですが、チームを生かすために個の能力を高めることは大前提として必要です。ただ、それぞれが勝手に動いていては、勝利を収めることは難しいですよね。チームとして強くなっていく必要があるという考えは学生当時からあったと思っています。
江畑:そのような(チーム力が必要だという)考えを持つようになった具体的なエピソードはありますか?
池田:大学4年生時に2部残留した時の話があります。私が入部した時は3部に所属していて、3年生の時に3部優勝、2部昇格を達成することができました。一方で、4年生の時は、慶應が2部に残留し定着していくことは実力的に厳しいのではないかという見方が多かったように思います。しかしチームとして結束し努力を重ねた結果、結果は確か6勝8敗で8チーム中5位になり、2部に残留することができました。前評判を覆し、このような結果を残せたことが、その後(卒業後)有望選手が毎年入ってきて1部に昇格したきっかけとなったことは、今でも誇りに思っています。
江畑:私達現役チームも今は3部にいて、今年こそ2部昇格を果たしたいと思っており、すごく参考になる話でした。ありがとうございます!
原:それでは最後に入部を考えている高校生へメッセージをお願いします。
池田:おそらく高校生のうちから将来のことを具体的に思い描くのは難しいことだと思います。その上で、皆さんには納得のいく進路選択をして欲しいと思っています。今後社会に出ていく上で、この大学4年間の経験は非常に重要な部分になってくると思っています。
慶應には慶應の良さがありますし、他大学には他大学の良さがあります。誰にとっても慶應大学への進学が1番良い選択だとも思いません。
ただ、文武両道を志し、先ほども伝えた人との繋がりや連帯感、愛校精神という点では慶應には強い魅力があると思います。他大学に関しても実際に話を聞いてみないとわからない部分があると思うので、色々な大学の関係者や現役生の話を聞いて決断してもらえたら良いと考えています。その結果、1人でも多くの学生が慶應義塾大学バスケットボール部に入ってきてくれたら嬉しいなと思います!
原:以上でインタビューを終了とさせていただきます。本日はお忙しい中ありがとうございました。