西戸良(2017年卒 / 住友商事株式会社)

インタビュー実施日:2023/4/15(土)

江畑:はじめまして。学生スタッフの江畑尚音と申します。本日はよろしくお願いいたします。

西戸:2017年に総合政策学部を卒業しました、西戸良と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

江畑:卒業後、現在はどのようなお仕事をされていますか?

西戸:現在は、住友商事という総合商社に勤務しており、ロンドンで生活しています。扱う商材にとらわれず幅広い分野のトレード、投資案件について、会計や税務の側面から支える仕事をしています。

写真提供:西戸良氏

江畑:現在のお仕事をしようと思ったきっかけは何ですか?

西戸:就職活動を始めた頃は幅広い業界を見ていたのですが、多種多様な業界で働いているバスケ部のOBの方々のお話を聞いている中で、自分に刺さったのが総合商社という業界でした。

大学時代に一度、バスケットボール部でロサンゼルス研修に行く機会がありました。バスケットボールを通じて海外に行き、現地の人とコミュニケーションを取る中で、言葉の壁を超えた人との繋がりや何かを成し遂げることに、自分の視野が広がるのを感じ、海外と繋がりの強い職場で働くことに魅力を感じたのも理由の一つです。

江畑:高校から大学への進学時に、慶應義塾大学を選択した理由は何ですか?

西戸:私の出身の洛南高校(京都府)から、同じようにAO入試で慶應義塾大学に入学した先輩がいたこともあり、慶應という存在は身近に感じていました。

中学時代から文武両道を軸にしていた自分にとって、大学に行ってもバスケをしながらしっかりと学びができる大学が良いと考えていました。

両親、高校の先輩、監督・コーチとも相談する中で、SFCという特殊なキャンパスがあり、自分の学びたいことを存分に学べる環境があることを教えていただき、慶應義塾大学を受験することを目指し始めました。

入試までの期間、バスケ部三田会の方々には手厚いサポートをしていただき、人との繋がりの強さや、先輩方の温かみというものを肌で感じられたこともあって、入りたい思いは次第に強くなっていきました。

写真提供:魁生佳余子氏

江畑:体育会バスケットボール部を選択した理由は何ですか?

西戸:高校時代、最後の大会となるウィンターカップに出発する直前の練習で怪我をし、集大成の試合に出場できなかったということがありました。その悔しさから大学でもバスケットボールを続けたいという思いは元々持っていました。

加えて、早慶戦という大舞台があることは高校時代から知っていて、高校時代の同期が多く早稲田大学に進学したこともあり、高校時代はチームメイトだった彼らと対戦してみたい、彼らを倒したいという思いも強くなり迷わず入部を決めました。

江畑:大学生活で、バスケットボール以外で力を入れたことはありますか?

西戸:私が通っていたSFCは、様々なことができるという特徴があると思います。4年間を通して学びたいことが見つかり、その分野の研究会に入ることもできました。

また、単位を取るということも大切ですが、その過程で出会ったキャンパスの友達や、人との繋がりというものを大切にして過ごしていました。

江畑:どのようなことを学ばれていましたか?

西戸:初めは幅広く学ぶ中で、スポーツを通して地域貢献することに挑戦したいと思うようになり、当時のバレーボール部の監督を努められていた教授の研究会に入りました。

SFCは体育会に所属している人、留学で来ている人、起業している人など、普通に生活していたら出会えないような個性豊かな人に出会う機会が多かったと思います。

研究会の仲間と協力して、一貫校にスポーツを教えに行ったり、地域の小学校で体験教室を企画・運営したりと、研究会の活動にも力を入れて行っていました。

江畑:人との繋がりを大切にしていると感じたのですが、社会人になってから人との繋がりを感じた場面はありますか?

西戸:卒業してからの方が慶應義塾の繋がりを感じる場面は多いです。

バスケ部だと、共に苦楽を過ごした同期とは、大学に在籍していた時よりもなぜか今の方が仲良くなっていますし、みんなで死に物狂いで頑張ってきたという土台があるからこそ、卒業した後に大きな財産になったと感じています。

社会人になってからもお互いの過去を知っているからこそ相談したり語り合えたりと、いつでも自分の帰る場所があるなと感じています。これからも大事にしていきたいです。

また、イギリスに来てからも驚くことがありました。英国三田会総会というものがあり、慶應義塾大学からイギリスに留学に来ている現役生から、60~70代のご年配の方までが400名程度集まるようなイベントで、プライベートやビジネスなど様々な会話が起こっているのは純粋にすごいなと思いました。

写真提供:魁生佳余子氏

江畑:高校と大学のバスケにおいて、何か違いは感じましたか?

西戸:高校は監督・コーチが主体となってチームをマネジメントしていて、指導者に恵まれているかどうか、有望な選手が揃っているかどうかが大きいと思います。

一方で、慶應義塾大学は学生主体を謳っていて、必死に頭を使わなければいけないし、勝つためにどうするかを考えるのが当たり前という環境でした。

江畑:部活動をする中で意識していたことはありますか?

西戸:学生スポーツは1年経てば毎年選手が入れ替わりチームの色もガラッと変わりますが、具体的に何が前年と変わるのか、自分はどこ補強すべきなのかと、客観的、柔軟に考えることは自然と意識していたと思います。

各年、4年生がチームに還元しようとする力が強いのも特徴だと思います。4年生たるやどうあるべきか、どうチームを作っていくか、強い組織を作るためにはどういった姿を取るべきかを全員が必死に考えていました。

下級生の頃から、そういった先輩方の姿をみて準備をしていましたし、良いところ、悪いところ、自分に合う合わないなど、自分自身を見直すきっかけにもなりました。

江畑:学年が進むにつれて役割はどう変化していきましたか?

西戸:1年目は、層も厚く得点を取りにいける選手が多かったと思います。その中で、自分はディフェンスから相手のキープレイヤーを崩しにいくことを意識していましたし、それがこの年に自分が強みを持って戦える部分だと感じていました。その必死にくらいつくディフェンスを評価して貰い、1年生の秋からは試合に出してもらえるようになったと信じています。

2年目は、少しずつ得点を取りにいくことやゲーム全体のバランスを考え始めました。ディフェンスは継続して力を入れていたものの、4年生が勝負のかかる必要なタイミングで体力を使えるよう、繋ぎとしてプレイメイクなどにも力を注ぐようになっていました。

3年目は、最上級生を1年後に控える中で、将来自分にはより得点力が求められると感じていたこともあり、得点力の強化、勝負勘を養うことを意識してプレーしていました。

4年目は、プレーでは1番ポジションも2番ポジションもやることがあったりと臨機応変に対応できるプレイヤーであることだけでなく、学生スタッフとも協力し、対戦相手を見越した練習メニューの作成、戦略も検討するようになり、キャプテンとして、最上級生として様々な経験をさせてもらいました。

江畑:主将としてリーダーシップを発揮する中で意識していたことはありますか?

西戸:副キャプテンの後藤(2017年卒)らとも協力し、誰よりも4年生が愚直に練習に向き合い、態度であるべき姿勢を見せることは意識していました。自分たちで組んだ練習メニューが勝利に繋がるかは、選手一人一人が練習の意図を確りと理解して行動に移し試合に繋がるか、力を出し切れるか次第だと思っていたので、私自身は率先した行動からチームを牽引できるキャプテンでいたいと考えていました。

理想はあるものの、もちろん人間なので練習中疲れて力が抜けるような場面もありましたが、同期の学生コーチだった丸岩(2017年卒)を始めとして学生スタッフからも厳しい声をかけてもらったりと、協力してチームのあるべき姿を体現しようと努められていたと思います。

こういった考え方は、自分が下級生の時に上級生の姿を見て学んできたことであり、先輩たちが残したものをより良いものに昇華してチームに還元しようという雰囲気が慶應義塾には受け継がれていると感じています。

江畑:バスケ部で身につけたことが社会で生きた経験はありますか?

西戸:一つひとつの物事に対して自分の考えを持つことが生きているなと感じます。

今の仕事は、会計・税務のルールを知らないと何も始まりません。また、それぞれの案件で難しい判断を迫られたとき、自分の考えに落とし込んで適切な答えを導き出せているか、自分の知識として蓄えていけるかどうかを自然と考えられているのは、学生時代の経験が生きていることだと思います。

自分の言葉が誰かに影響を与えることに責任を持ったり、毎日の練習メニューが後輩の未来に繋がると考えたりしてきたスタンスが今に繋がっています。

写真提供:魁生佳余子氏

江畑:バスケ部に入って良かったと思うことは何ですか?

西戸:大きく2つあると思います。1つ目はこれまでに話したように、自分で考える力がついたことです。

2つ目は三田会との繋がりです。社会に出てからあちこちに慶應出身者がいて、同じ大学を卒業したというだけで気持ちの繋がりを感じられるのは、慶應義塾の良さだと思います。素晴らしい大学は他にもたくさんありますが、卒業後にも強いつながりを感じられるのは慶應義塾ならではだと思います。

慶應OBという繋がりがきっかけで仕事が上手く進むことがあったり、繋がりが強いが故の社会に出てからも周りが応援、サポートしてくれる環境、これから出会う慶應OB・OGの方々との公私での繋がりはかけがえのない財産だと感じています。

江畑:最後に入部を考えている高校生に一言お願いします。

西戸:慶應義塾は、物事の成功、失敗に関わらず、様々なことに挑戦する人間を絶対に後悔させない大学だと思います。私が在籍していたSFCというキャンパスがそうであるように、学生が望むなら大学というツールを上手く使って、色々なことに挑戦できる環境がそこにはあります。サポートしてくれる一生ものの仲間もたくさんできるはずです。

大学在学中に自分が将来成し遂げたい夢が明確に決まった、或いはまだ考えているなど様々なステージで色々な思いを持った志高い学生が慶應義塾にはたくさんいます。感覚で慶應が良いと感じた為に入学を志した、という始まりで問題ないと思います。最も大事なのはやりたいことができた、決まった時にそれを叶える環境にいるかどうかだと思います。慶應義塾は間違いなくそれに応える大学です。

私自身もそうでしたが、慶應義塾の雰囲気や良い部分は高校生からは見えにくいかもしれません。もし少しでも気になっているならば、遠慮なく現役バスケットボール部員やOB・OGにコンタクトして頂きたいと思います。我々慶應義塾体育会バスケットボール部はどんな高校生の挑戦も待っています。

江畑:本日は貴重なお話をありがとうございました。

西戸:ありがとうございました。