学部:法学部政治学科
出身校:國學院大學久我山高等学校
<志望動機>
以下、私が提出した志望理由書になります。
内閣官房副長官である酒井学さんとの1時間に及ぶ対談はとても意義深いものがあった。万人が納得できる公共政策をつくるにあたって、「当事者の意見を汲み取れ」という主張はよく分かる。その中で遠い将来を見据えて、多種多様な関係者の意見をすり合わせることが如何に難しいか理解することができた。ただこの難しさを棚にあげず、広く利害関係者の合意形成を図り、政策に落とし込める高い次元のプロフェッショナルになるために、日本最高峰の貴学部で是非学びたい。
そんな思いの原点はこれまでの経験にある。豊洲にある私の家の目の前には東京湾が広がる。生きがいの釣りは初めて早14年だ。全国の漁港にも頻繁に足を運び、その土地でしか食せない漁師飯と出会う瞬間は幸せの極みだ。しかし最近「魚が取れなくなってきた」と話す漁師や釣り人と出会うことが多くなってきた。確かに家の目の前の豊洲ぐるり公園でも3年前を境にクロソイが釣れなくなった。全国の漁師の生活も、日々業務で使う氷代700円を稼げるか、毎日綱渡りの気分と言うほど苦しい。私はこの状況に複雑な気持ちになった。
調べていくと日本の漁獲量は世界の傾向と逆行するように急減しており、その主原因は乱獲にあると分かった。これは全体の漁業枠のみを決め、その内訳を個々の漁船の漁獲量に任せていたために、早い者勝ちの漁獲が起きてしまっているのだ。これを打破するために、2018年に70年ぶりに漁業法改正が行われ、改正後に設けられたIQ方式では、漁業者や漁船など個別に漁獲量を割り当て、かつ割り当てられた漁獲量を譲渡できないようにすること等が定められた。国としては大規模な改革だったが、日本中の漁師約50人と対話する中で、そもそもこの改正を知らない人も多くいた。稚魚を放流するなど自主的な管理に取り組む方も多い中で、「捕らなかったら、この先魚が獲れるのか」とこの改正を疑問視する漁師もいた。そもそも漁場ごとに漁獲量に差があるだけでなく、漁獲種も異なるため、これらに全面的に配慮した漁獲量設定は難しい。
これを一挙に担っているのが水産庁であるが、彼らも現地漁師との連携が取れず、四苦八苦しているという。水産庁や水産加工大手のマルハニチロの方々に話を伺ったが、漁獲枠策定の元となるデータ集積が遅滞なく行えないと言うのだ。本来であれば各漁業データを蓄積・分析した上で、相当の量を割り当てるべきなのだが、そのデータの元となる操業日誌は漁師目線の定性的な言葉でしか記載されていない。現場に根ざした水産庁の職員も少なく、漁師と行政の溝は深まるばかりだ。その間にもスケトウダラの漁獲枠策定にも失敗し、5年間でその数を30分の1にしてしまった事例まである。また漁師や組合の調査への非協力的な姿勢は「利害の不一致」にあるという。国や行政としては「国としての公共財を守りたい」という意識が強いが、漁師や組合は「将来の海より、今の海」しか見えておらず、自身の生活が抑圧されかねない調査を拒む気持ちも大いに理解できる。
この現状に対して、内閣官房が調査の強化を図るため、水産庁の管轄である水産研究・教育機構の独立を検討していることを副官房長官の坂井学さんとの対話で知ったが、この改善策は「縦割り行政」の難しさを感じざるを得ない。漁業形態によって管轄する行政を縦割りにすることで、個別の漁業データを集めやすくできる。一方で、調査は水産庁の研究機構、密漁を取り締まるのが海上保安庁、魚の保護は環境省といった形で行政が細分化されるほど、漁師や組合からすれば、有事の際の連携が取りづらく溝は深まる。海洋資源という公共財と漁師の生活を守るためにも、効果的な政策の打ち出しは必要だが、その在り方にも正解がない。また、密漁や日本近海に来遊する魚の減少など、一国だけでは対処できない課題も忘れてはいけない。
だからこそ私は漁師、組合、行政など全ての利害関係者が見据える「日本の魚を守る」という目的に向けて、それぞれの利害調整を丁寧に行い、日本行政の難しさを正確に理解したい。そして誰もが納得し得る公共政策を提言する専門家になりたい。そのためにまずは日吉で行政学や政治学、経済学などを学び、その素養を養う。また日本行政を形作る社会への幅広い理解はもちろんのこと、国際的な枠組みや他国との連携のあり方を考えるために、国際政治や他国への深い理解も必須だ。三田では、計量分析の実効技術を通して得た学びを元に政策立案の模索まで行える築山研究会に所属し、資源管理の科学的根拠を計量分析によって導き出し、確実に政策に落とし込む術を身につけたい。加えて法律学科では、国際的な法の枠組みや行政法についても丁寧に学びたい。貴塾の学際的な学びを最大限に活用し、公共政策という公益を追求する者としての公平性や中立性を育みたい。そのために貴塾法学部政治学科を強く志望する。
私は、魚が大好きで、漁師との出会いや自身の体験から水産業の乱獲問題に興味を持ち、政策としてこれを解決することの難しさに多くの活動を通して直面してきました。この問題を解決するには、利害調整のあり方や、日本の行政システムへの理解など、政治的な理解が不可欠でした。それゆえ、法学部政治学科を志望しました。この志望動機を、パラグラフライティングを意識して書き上げたのが上記の志望理由書になります。
<受験勉強について>
私が総合型選抜を受けようと決意したのは、高校2年次の1月です。元々、指定校推薦で慶應義塾大学に進学しようと考えていたのですが、評定平均オール5の人がいたため、諦めざるを得ませんでした。そこで先輩や学校の先生が総合型選抜の存在を教えてくれ、挑戦に至りました。
挑戦を決意してからまず、私は総合型選抜専門の塾に通いました。塾で行っていた対策は、主に・志望理由書対策・小論文対策の2つです。
志望理由書の対策に関しては、まず、志望理由書を作成する上で必要な「テーマ」の設定を行いました。自分の興味のあること、問題意識からテーマを決めていくのですが、バスケに打ち込んでいた私に合うテーマが中々見つからず、テーマ探しに相当時間をかけていた記憶があります。そこで私は一旦、自分の趣味である釣りにまつわる水産業の問題をテーマに置き、「誰にとって、どのような問題なのか」を完璧に説明できるまでひたすら探究を行っていきました。そこから私は、塾の先生の助言をもらいながら、全国津々浦々の漁港に足を運び、50人を超える漁師の方のお話を伺い、水産業の問題点を明らかにしてきました。この活動から私は、日本の水産政策への懐疑心が生まれ、そこから水産庁や当時内閣官房副長官だった坂井氏にお話を伺いました。これらの活動を経て、私は利害調整の難しさに気付かされ、利害調整のあり方に興味を抱くようになりました。この活動を経て、私は慶應義塾大学の中でも、政治に関しての学びが充実している法学部政治学科を志望するようになりました。
一方、志望理由書の対策と同時並行に進めていた小論文の対策は、塾のカリキュラムに沿って、問題を解き、添削してもらい、解答例を写経し、解き直すというサイクルを回していました。そして、慶應法学部の一次の合否が出てから、本格的な対策を始めました。私はB方式のみ合格をいただいたので、総合考査の対策に専念することができ、過去問を計10周ほど行い、予想問題集も多く解くように意識していました。今振り返ると、量をこなして、知識をインプットし、自分なりの書き方を会得することが大事だと感じています。
<バスケ部について>
弊部のOBである父の存在もあり、入学後すぐに私は入部を決意しました。当時を振り返ると、高校生とは違う練習の強度に圧倒されていたことを思い出します。特に弊部は、練習時間は1時間半ほどと短く、休憩時間もない上、集中力が問われます。この環境でバスケを続けることはとても大変ですが、時間を上手く使えば様々なことに挑戦できます(もちろん沢山遊べます)。これ以外にも、良好な上下関係を築けているのも弊部の大きな特徴だと私は感じています。上下関係が全くない訳ではありませんが、お互いがお互いをリスペクトしあっているので、誰でも意見を自由に述べられる環境があります。実際、今年の一年生は、このチームの戦術や取り組みに対して積極的に意見を出してくれているので、上級生としてはありがたさを感じるばかりです。そして、オフの日にも先輩や後輩と遊びにいくことができるのも、このチームの強さだと感じています。更に何よりも、本当に恵まれた環境でバスケットに打ち込めるのが弊部の一番の特徴であり強みだと感じています。記念館という大きな体育館で練習できていることもそうですが、OBの方などの支援も多く、日頃から横だけでなく縦のつながりを感じる機会が多いです。(OBOGの方々、日頃から多大なるご支援、ご声援をいただきありがとうございます。)また、最近は周りの学生スタッフ陣にも恵まれていると感じる機会が多々あります。日頃から練習会場を抑えたりしてくれている田中さんや江畑だけでなく、テーピングを巻いてくれる中山や重野、名前を挙げると本当にキリがないのですが沢山の学生スタッフのおかげで僕らはバスケに専念できています。こうした環境は、弊部ならではだと感じていますし、選手一人一人のモチベーションにもなっていると思います。そしてこのように多くの同志がいると、試合で勝てた時の喜びはその分大きくなります。少し長くなりましたが、私はこの部活の全員が大好きですし、心の底から出会えて良かったと思っています。このような人との出会いや、やりがいは弊部でしか体感することができないと私は確信しています。