学部:環境情報学部
出身高校:近大付属広島高校東広島校
私が慶應義塾大学環境情報学部を志望したのは、「バスケ療育」という分野において、プログラミングやセンシング技術を活用しながら、社会課題の解決に向けた研究ができると確信したからです。
バスケ療育とは、発達障害のある子どもたちの社会的自立や精神的安定、高齢者の身体機能の回復を目的とした運動療法です。これからの人口減少社会において、一人でも多くの人が自信を持ち、社会の一員として活躍できるようにすることは、大きな価値があると考えています。その手段として私が注目したのが、「コミュニケーションが不可欠なスポーツ」であるバスケットボールでした。
高校2年生の夏から本格的に活動を始め、これまでに小・中学校あわせて4校、延べ484人の子どもたちに対してバスケットボールのクリニックを行ってきました。そのなかで発達障害のある子どもたちに出会い、彼らがうまくプレイできず、他の子どもとの関わりに消極的になってしまう姿を目にしました。私はそこで、「どうすればこの子たちが安心して参加し、自然な形で人と関われるようになるのか」と問いを立て、探究を深めるようになりました。
この探究の出発点にあったのは、自身のバスケットボール部での経験です。中高6年間、選手としての技術だけでなく、チーム内外でのコミュニケーションの重要性や、スポーツがもたらす自己肯定感の大きさを体感しました。特に高校生の時は、メンバーの個性や特性を活かす指導やプレイを意識し、周囲を巻き込む力や、相手に寄り添う姿勢を育んできました。こうした経験が、バスケ療育という分野に自然とつながっていきました。
探究はバスケットの技術指導にとどまらず、音楽を活用したリトミック的アプローチの導入や、動作解析によって身体機能の変化を可視化する試みにも広がっています。今後はモーションキャプチャなどの技術を活用し、「運動×音楽×テクノロジー」による療育の新しい形を確立していく予定です。
また、私自身がバスケットを通して得た積極的なコミュニケーション力も、探究を支える大きな原動力になりました。その経験を活かし、広島県東広島市に公共のバスケットコートを作ってもらうため、約1,600名分の署名を集め、市の教育長様に直接提案に伺いました。東広島市長様の前で、私が取り組んでいる探究内容や、なぜコートが必要なのかをプレゼンし、行政への働きかけも経験しました。
そして、私がSFCを志望するうえで心強く感じたのが、慶應義塾大学のバスケットボール部の存在です。競技に真剣に向き合いながらも、皆さんが文武両道を実現していて、勉強や研究の面でも気軽に質問や相談ができる雰囲気があります。上下関係に縛られず、誰とでも自然に話せる温かさがあり、技術面でもスタッフの方々の的確なサポートによって、練習が非常に効率的かつ充実した時間になると体感しています。私のようにスポーツと社会課題の融合を志す者にとって、このような環境は理想的です。
こうした活動と並行して、慶應SFCのAO入試に向けた準備も進めてきました。志望理由の言語化やポートフォリオの作成を通じて、自分の探究を客観的に見直すとともに、「なぜこの大学でなければならないのか」「自分の問いをどこまで深められるのか」を徹底的に考え抜いてきました。探究と受験準備は別物ではなく、むしろ両者が重なり合うことで、私の進むべき方向性がより明確になっていきました。
このように、私は現場での実践を通じて課題を発見し、問いを立て、行動しながら探究を進化・深化させてきました。慶應義塾大学SFCの環境情報学部であれば、自分自身の関心を情報技術の力と掛け合わせて、より科学的かつ社会的に意味のある形で発展させていけると確信しています。
慶應のAO入試に挑戦するみなさんに伝えたいのは、「探究の進化と深化」が何よりも大切だということです。活動の規模よりも、「なぜそれをやるのか」「どのように問いを深めたか」「次に何をしようとしているのか」が問われます。自分の経験や関心から出発し、どこまで自分なりの視点で社会とつながろうとしたか。それが、慶應SFCのAOで最も見られていることだと思います。
今後も、現場と向き合い続けながら、自分の探究を「社会に実装される形」へと発展させていきたいと思います。


*地元の小学校で行ったクリニックの様子