2025年 AO入試:桑原佑尚

学部:総合政策学部 
出身高校:熊本県立済々黌高等学校 

<はじめに> 

こんにちは!現在慶應義塾総合政策学部1年、並びに体育会バスケットボール部所属の桑原佑尚と申します。この度はこのような貴重な機会をいただきありがとうございます。私自身、受験の際には慶應義塾体育会バスケットボール部のOBの皆様には多大なご支援をいただきました。そのご恩に少しでも報いるとともに慶應バスケットボール部のさらなる発展に貢献したいという思いから、今回、受験生の皆さんにとって少しでも有益な情報をお届けできればと、僭越ながら筆を執らせていただきます。 

<志望動機> 

 私の故郷・熊本県天草市は、急速な人口減少と高齢化に直面しています。高齢化率は40%を超え、2025年には老年人口が生産年齢人口を上回る見込みです。若者の多くは高校卒業後に進学や就職を機に島を離れ、その多くが戻ってきません。地元経済は縮小し、自治体の財政は社会保障費に圧迫され、地域資源を活かす余力が不足しています。しかし、外に出た若者の中には、改めて天草の豊かな自然や人の温かさに気づき、「いつかは地元に貢献したい」と考える人も少なくありません。私自身もその一人です。 

 高校時代には天草市長や地元企業にインタビューし、現場の声から課題の本質を探りました。その経験を通じて、私は都市と地方をつなぐ仕組みの必要性を強く感じました。そこで将来は、天草に拠点を持ち、地域資源を活用したビジネスの創出を支援するコンサルティングファームを立ち上げたいと考えています。大企業を誘致するのではなく、小規模な事業を数多く生み出し、外部の企業・投資家と天草の人々をつなげることで、雇用を生み出し、地域に人と資金が循環する仕組みをつくりたいのです。 

 この目標の実現には、分野横断的な視点や実践的なプロジェクトを通して学ぶ環境が不可欠です。SFCでは、多様な分野にまたがる学問を自由に組み合わせて学ぶことができ、研究会やフィールドワークを通じて、現場で実践しながら課題解決力を高めることができます。中でも、社会的価値の創出を目指す飯盛義徳研究会に関心があります。将来的には、天草の事例をモデルとして、他の地方にも展開可能な地域再生の仕組みを構築し、持続可能な日本社会の実現に貢献したいと考えています。 

<AO合格の鍵> 

  1. 分野のスペシャリストになる。 

  1. よく考え、よく伝える。 

  1. 大人の力を借りる。 

これは、私が昨年AO入試を経験し、現在SFCに通う中で感じた「AO入試において特に重要だと思う3つのポイント」です。以下、それぞれについて私の考えを紹介します。 

 まず①「分野のスペシャリストになる」についてです。SFCでは、AO入試を通じて入学する学生に、将来的に多様な議論の先頭に立つことを期待しています。そうした役割を担うには、特定の分野において突出した知識や経験が不可欠です。実際に私の周囲には、高校生のうちに紛争地域であるガザ地区を訪問し、現地の課題に触れてきた学生や、社会課題の解決を目指してスタートアップを立ち上げた学生などがいます。いずれも高校生の枠にとどまらない行動力と専門性を有しており、まさに“分野のスペシャリスト”と呼べる存在です。このような事例からもわかるように、AO入試で求められるのは単なる関心や好奇心ではなく、自分のテーマに深く取り組み、知識や経験を積み上げた姿勢です。したがって、「分野のスペシャリストになる」ことは、AO合格に向けた前提条件とも言えるでしょう。 

 次に②「よく考え、よく伝える。」について。やはり平生からいかに物事を深く考え、周りと共有できるかは他の受験生との差を生む鍵になると思います。私自身AOを受けると決める前から癖のようにニュースで取り上げられている社会課題等に対して自分自身の考えを持つということをしてきました。そしておそらく私の両親には面倒臭がられるくらい知識と考えを共有していました。今思えばこのような習慣が入試の際に役立っていたのかなと思います。自身のAOのテーマに関わらず日常から思慮深く物事を捉え、共有するということを実践してみてはいかがでしょうか。

 そして③「大人の力を借りる。」について。この言葉を聞くと、一見「他力本願」のように思われるかもしれませんが、実際にはそうではありません。AO入試という特殊な受験形式においては、高校生一人の視点だけでは気づけないこと、到達できない領域がたくさんあります。だからこそ、社会経験豊富な大人の話を聞き、時には手を借りることが非常に大切です。私自身、AO対策塾には通っていませんでしたが、その分、先生方や地域の専門家、先輩など、多くの大人の方々にアドバイスを頂きました。活動実績を積んでは見てもらい、意見を受けて修正し、また提出する。この繰り返しによって、最終的に納得のいく資料を作ることができました。そして、情熱を持って取り組んでいれば、必ず誰かが手を差し伸べてくれるものです。私が多くの大人に支えていただいたように、その熱意は面接官にも伝わると信じています。共感を呼び、支援を受けながら進んだその歩みが、最終的にSFCの合格へとつながったのだと思います。 

<バスケ部について> 

最後に、少しだけ私が所属する慶應義塾体育会バスケットボール部についてお話しさせていただきます。私が慶應を志望した決め手でもあり、現在在籍していて感じる魅力は、以下の3つです。 

① チームとして急成長中であること 
 上級生たちが築いてきた「練習の質」や「思考の深さ」に、下級生の技術的・フィジカル的な強さが加わり、チーム全体が大きな上昇気流に乗っていると感じています。日々の練習の中でその勢いを実感できるのは、大きなモチベーションになっています。 

② 試合経験が豊富に積めること 
 早慶戦という伝統ある舞台はもちろん、韓国遠征など海外との試合経験も積むことができます。さらに、現在チームは3部に位置しており、「這い上がる」過程の中で自分の成長とチームへの貢献を実感できる環境が整っています。 

③ OB会からの手厚いサポート 
 OBの方々からの金銭面での支援や、元プロのコーチによる指導など、現役部員を本気で支えてくださる環境があるのも大きな魅力です。伝統と挑戦が共存するこの部での経験は、きっと大学生活を豊かにしてくれるはずです。 

<最後に> 

ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。 
慶應義塾大学には、学問とスポーツの双方に真摯に取り組める、恵まれた環境が整っています。知的好奇心を存分に満たせる学びの場、そして切磋琢磨し合える仲間とともに汗を流すバスケットボール部での時間は、間違いなくかけがえのない経験となるはずです。受験勉強は決して楽な道のりではありませんが、自分自身と向き合い、関心や情熱の源を探る時間でもあります。その過程さえも前向きに受け止め、楽しんで取り組んでいただけたらと思います。皆さんの努力が実を結び、すばらしい未来へとつながっていくことを、心より願っています。 

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