題名:同期に恵まれた七年間
ページを開いて頂きありがとうございます。
僕は慶應義塾體育會バスケットボール部4年生(2018年度)の吉敷秀太と申します。
部では選手として活動し、背番号は8番、出身校は慶應義塾志木高等学校(名門)、得意なプレーはリバウンド、ポジションは最早自分でもよくわかりません。
SNS等でキャッチコピーをもらうときは、「Mrストイック」や「慶應のバスケを体現する男」という、初めて見る方には分かりにくい二つ名をもらいがちです。
これを読んでいる方は、「特に褒めるところないから適当に名付けたんじゃないの?」と思われないか心配です。
卒業間近になった今振り返ると、このように呼ばれていたことはとても恐れ多いことでもあり、同時に僕の誇りでもあります。
今回はそんな僕と、僕の仲間のことを振り返ります。最後までお付き合い頂けると幸いです。
僕は一貫校生なので、話は高校生編からスタートします。
僕のプレースタイルのルーツは間違いなく慶應志木にあります。
全員で取り組むディフェンスやリバウンドやルーズボールを土台に、各々が得意分野を発揮して勝つのが慶應志木のスタイルです。
このスタイルによって毎年尖った個性を持つ選手が育ちがちでとても面白いチームだと思います。
僕の同期にも、フックシュートだけやたら上手い、ハイポストのシュートだけなぜか入る、ディナイが気持ち悪いくらいしつこい等々、おかしな成長を遂げた選手が溢れていました。
例に漏れず、僕もポストプレーで得点を取る170㎝のセンターへとおかしな成長を遂げました。
小さいのにセンターのプレーにばかり時間を使っていたので、今でも育成ミスだと周りから冗談で馬鹿にされます。
確かに大学では、ほとんどポストプレーはしませんし、その練習自体はつながっておらず、育成ミスかもしれません。
しかし技術を身につけるために考えて努力する能力、自分より大きい相手とぶつかっても怯まない闘争心を得られたことは間違いなく大学でも大きな財産になりました。
ここまでの文章を読んで、慶應志木をただの癖の強いプレイヤーが集まったチームだと思うかもしれませんが、それだけではありません。
慶應志木は他のどの高校よりも勤勉にディフェンスやリバウンドを行うチームです。
高校時代に対戦したどのチームよりも慶應志木はこれらが徹底されていました。
試合であれ練習であれ、試合に出る選手であれ出ない選手であれ全員が死ぬ気で一つのボールを追いかけます。
たまにラグビーボールも追いかけます。(ボールへ飛び込む練習です。)
「試合に出ない選手が必死にボールを追いかけているのに、試合に出る自分がボールを追いかけない訳にはいかない」、僕のリバウンドがここまで上達したのは、こんなポジティブなプレッシャーによるところが大きいと思っています。
チームメイトの熱意があったからこそ、自分も負けまいと必死になることが出来たのです。
このようなチームでのプレーが僕のバスケットボールの土台になっているので慶應志木には本当に感謝しています。
そんな真面目なのかヤンチャなのか分からない高校での最後の大会は、周囲の予想に反し県でベスト4まで勝ち上がることができ、有終の美を飾り引退しました。
あまりにうまいこと勝ち上がれてしまったことにより、大学の體育會でもプレーできるかもしれないと思いあがったため、話は大学編へと突入します。今しばらくお付き合いください。
皆さんは大学の體育會と聞いてどのような印象を受けるでしょう。
上下関係が厳しい、先輩が怖い、入部するのにテストがある等々、色々な想像をすると思いますがそれは違います。
體育會バスケットボール部の門は誰にでも開かれています。
しかし部に入ったからには守らなければならない哲学があります。
「最大限の努力によって最高の結果を出す」
この哲学に沿ってチャレンジできる人間の集団が體育會バスケットボール部です。
大学の僕の同期はバスケットボールに対して超が付くほど真面目です。
プライベートの彼らをご存知の方は信じないかもしれませんが、バスケットボールに対しては真面目です。
そんな真面目な彼らがいたからこそ自分も4年間頑張ってこられたと思っています。
真面目というのは努力が出来るというだけでなく、本当にチームに必要なものを追求できるという意味です。
要するにミーティングでは厳しいことも結構言い合います。
しかし自分はその厳しさに大いに助けられたと思っています。
大学に入学したばかりの僕は、全体練習に参加すらできませんでした。
それは単純に僕が下手だったからです。
上手い先輩方のプレーを見て、日々自主練習を重ねましたが、正直言って当時の僕は最終的にプレーでチームに貢献できるレベルに到達できるのか不安でした。
早めにスタッフに転向した方がいいのではないかと考えたこともありました。
そんな不安を払拭してくれたのが同期でした。
彼らはバスケットに関して取り繕ったことは言いません。
僕が本当にスタッフに転向した方がチームのためだと感じたら正直に伝えてくれます。
僕のプレーが良くなかったら間違いなく指摘してきます。
特に同期の学生コーチにはよく怒られました。
そんな同期が僕に対してあらゆる要求をしてくるは、選手としての僕に、もっと活躍できるはずだ、という良い意味でのプレッシャーを与えてくれたのだと感じています。
だから同期にはとても感謝しています。
前述したように、僕は周囲からストイックや真面目と言われてきました。
しかしそれは少し違います。
正確には僕だけの力で、周りからストイックと言われるほど努力ができたのではありません。
僕の同期は全員僕より上手でした。
それでいて彼らは、僕のバスケット人生の中で最も上達にどん欲なチームメイトでした。
「自分より上手い選手が努力しているのだから、せめて彼らよりも努力したい」と、彼らの意識の高さに引っ張られるように、自分も負けじと努力したのです。
周りからストイックと呼ばれた僕ですが、そんな僕を作ってくれたのは間違いなく僕にたくさんの刺激を与えてくれた同期です。
引退した今思うことは、僕のバスケットに対する姿勢が、少しでもチームメイトに良い刺激を与えられていたのなら本当に喜ばしいということです。
ここまで僕と僕のチームメイトを、高校と大学に分けて振り返ってきましたが、僕が慶應でバスケットボールに打ち込んで、ここまで充実した生活を送ることが出来たのは間違いなく仲間たちのおかげです。
彼らは僕に責任感や自信など多くのものを与えてくれました。
また僕が彼らに与えたものもきっとあったはずだと信じています。
皆さんには本当に信頼している仲間はいるでしょうか。
自分のことを思い、時には厳しいことも言ってくれる、自分と切磋琢磨してくれる真の仲間はいるでしょうか。
僕はお世辞にも友達が多い方とは言えませんが、このような仲間を手に入れたことは自信をもって誇ることが出来ます。
小泉信三先生は、スポーツが与えてくれる三つの宝の一つに、「生涯の友」を挙げています。
慶應でのバスケットボールは間違いなく僕にそれを与えてくれました。
本当にこの学校でバスケットボールに取り組んで良かったと感じています。
大学で何に打ち込もうか考えている方、そもそもどこの高校・大学に進もうか考えている方、慶應でバスケットボールに取り組むのはいかがでしょうか。
きっと生涯の友が手に入るはずです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。