昨シーズンを振り返って:中山圭

 ドライブ直後のパワードリブルで相手を約3メートル飛ばす本塾のフィジカル担当(選手枠)中島よりバトンを受け取りました、現在体重89kgの本塾のフィジカル担当(スタッフ枠)並びに慶應義塾大学経済学部3年の中山圭です。

 皆さんが楽しめる文章を書くように心がけました。最後まで読んでいただけますと幸いです。

はじめに

 私のブログのテーマは「前シーズンを振り返って」。私の前シーズンに名前を付けるなら、それは「試練の連続」です。一難去ってまた一難。人生で最も精神的に追い詰められた1年でした。リスクの大きい挑戦、常に期日に追われる生活。オフの日に本当にオフしたのは、片手で数えられるぐらいでした。常に心臓の鼓動は激しく打ち、脳内を支配するのは不安のみ。事あるごとに逡巡し、色々な方に迷惑をかけてしまいました。ただ、心が折れそうな試練の連続を乗り越え、今こうしてブログを書くことができているのは、「二つの音楽」のおかげだと考えております。恥ずかしながら、当時の私は曲の歌詞に自身の状況を強く投影し、感情移入することで、なんとか心の状態を保っていたのです。今回は、私の前シーズンを支えてくれた「音楽」とともに、前シーズンを皆さんと振り返りたいと思います。

春シーズン:「重圧」

 この時期は、早慶戦の運営に注力しておりました。例年よりも早い時期の開催、さらには野球の早慶戦と日程が重複し、何もかも急ピッチで準備を行う必要がありました。早慶戦は大学バスケットボールにおいて、最も観客が入る大会です。選手はもちろん、運営の学生、日頃応援していただいているOBOGの方、さらには協賛企業の方まで、それぞれが特別な思い入れを持っています。

 私は「本当に開催することができるのか?」と、足がすくむ思いでした。

 ただでさえ注目度の高い大会。加えて野球戦との日程重複という異例の事態。様々な関係者の期待を一気に背負うその責任は、当時の私にとって人生最大の試練でした。変えられない現状と、必ず期待に応えなければならない重圧が脳裏を離れず、動悸が止まらなくなり、体調を崩すこともありました。しかし、そんな極限状態の中で出会った曲に、私は力をもらいました。その歌詞には、こう書かれていました。

Insanity laughs under pressure we’re breaking.

Can’t we give ourselves one more chance?

Why can’t we give love that one more chance?

(中略)

Because love’s such an old fashioned word.

And love dares you to care for

The people on the edge of the night.

(中略)

This is our last dance.

This is ourselves under pressure.

(日本語訳)

僕らが打ち破っているプレッシャーの下で狂気が笑い出す。

僕たち自身にもう一度チャンスを与えてみないか?

(中略)

「愛」がもう古びた言葉になってしまったから

そして愛は君に勇気をあげるから

夜の片隅にいる人々を気にかける勇気を

そして愛は君に生き方を変える勇気をあげる

これが僕たちの最後のダンス

これが重圧の中での僕たちだ

Queenの『Under Pressure』という曲です。

「愛は君に勇気をあげる」──歌詞の通り、愛という言葉は私に勇気をくれました。

 のしかかる重圧を恐れるのではなく、愛を持って早慶戦の準備を行う。それこそが、様々な方の思いや期待に対する一番の恩返しになると思えたのです。大会の準備と心身の不調で厳しい状態にあった私を、この曲が奮い立たせてくれました。

 大会当日の男子戦、ふと観客席を見渡した時の光景は忘れられません。本当に多くの方が応援に来てくださり、全身に鳥肌が立ちました。あの日のために準備した時間は、私にとってかけがえのない経験として刻まれています。

秋シーズン:「葛藤」

 早慶戦が終わり、リーグ戦への準備を始める中、私自身も一旦落ち着くかと思っていました。しかし、部内における私の裁量は、予期せぬ形で大きくなっていったのです。

「早慶戦の準備を経験したあとに、これぐらいの困難は余裕でしょ」

 正直、最初はそう高を括っていました。しかし、現実はそんなに甘くありませんでした。

 キャパシティを超え、業務を円滑に遂行することが困難になる。同時に責任領域も拡大し、一見関与していない事象でさえも、私が責任を負わなければならない場面が増えました。

 リーグ戦前はいろいろな方に心配をかけてしまい、自分の不甲斐なさがただ情けなく、辛かったです。「森羅万象すべてに当事者意識を持たなければならない」ことは、当時の私の精神状態にはあまりに大きな負担でした。

 また、リーグ戦が始まると練習の雰囲気も殺伐としてきます。おそらく、真剣に勝負しているチームであればどこも同じでしょう。シーズン前に描いていた理想像と、目の前の厳しい現実とのギャップ。「このメンバーならもっとやれるはずだ」と誰もが思っているのに、なぜか歯車が噛み合わない。一体感を得て上昇気流に乗るのか、それともバラバラに瓦解してしまうのか。

 私は、その殺伐とした空気にすら責任を感じていました。

 「もしかして、私は正しいリーダーシップを執っていないのではないか」

 秋シーズンの最初から、チームのために多くの時間を犠牲にして行ってきたことさえ、私の独りよがりの行動なのではないか。そんな疑念が頭を離れませんでした。

 自分のやっていることは正しいのか。出口の見えないトンネルを歩いているようだったあの頃。夜の日吉、銀杏並木を下るときに出会ったのがこの曲でした。

運命に負けないで

たった一度だけの人生を

何度でも起き上がって

立ち向かえる

力を送ろう

どうぞ忘れないで

移ろう時代(とき)の中から

あなたを照らし続ける

希望という名の光を

あなたを照らす光を

希望という名の光を

『希望という名の光』山下達郎さんの曲です。

 誰もいない夜の並木道で、この歌詞を聴いたとき、張り詰めていたものが切れたのかもしれません。私は一度歩くのをやめ、陸上競技場のベンチに座って、一人で泣いていました。あの日、涙とともに流した弱さが、何度も訪れる試練に立ち向かう力をくれたのだと思います。

最後に

 いかがだったでしょうか。

 辛い振り返りが続きましたが、最後にこれからの話を少しだけしたいと思います。

 私は最近、Earth, Wind & Fireというバンドをよく聴いています。

 彼らの曲をよく聴くと、「メインボーカルがサビ以外を歌って、サビ(盛り上がり)は全員で歌う」曲が多いと感じました。

 私は慶應バスケ部を彼らみたいなチームにしたいと思っています。

 目立たないところこそ最上級生が一番頑張り(サビ以外)、試合(サビ)は全員で歌うように戦う。チームビルディングはまだ途中ですが、そんな姿を目指してみるのも悪くないと思いませんか?

 最後まで読んでいただきありがとうございました!

 次はK-POPが好きな2年の村田にバトンタッチします。

 乞うご期待ください!

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