「日本一“チーム”を大切にするチーム」へ
はじめに
今年度、慶應義塾大学體育會バスケットボール部主将を務めさせて頂いております甲谷勇平と申します。
日頃よりご指導、ご支援を有難う御座います。
遅くなってしまいましたが、このような形では御座いますが日頃の感謝と共に、ご挨拶させて頂きます。
慶應の強み
今年のチームは「早慶戦優勝」「3部全勝優勝」という2つの目標を掲げています。
その目標達成のために、チーム力を大切にし、一人一人が自分にしかできない役割を全うすることを求めています。
個人で戦うのではなく、チームで戦うという意識を強く持っています。
これは昨年度の早慶戦の教訓から得たことです。
昨年の早稲田大学の早慶戦メンバーは、個人個人を見てもほとんどのメンバーが全国で活躍したスーパースター軍団でした。
一方で慶應義塾はそもそも全国に出場した選手の方が少ないというチーム状況でした。
周囲は個人単位でチームを捉え、圧倒的に早稲田が上であると判断し、早稲田が勝つと思っているように感じていました。
しかし結果はどうだったでしょうか。
あの昨年度の早慶戦こそが「慶應らしさ」を象徴していると考えています。
それは、一人一人が自分の役割というものを認識し、皆が泥臭くプレーし嫌な顔一つせず当たり前のことを当たり前に取り組んでいました。
そして何より、皆がチームのためにプレーしていました。
この昨年度の早慶戦を経て、慶應の強みを再認識したと共にチームで戦うことの強さを学びました。
そこで今年のチームでも引き続きチームにこだわり、チームで戦うという前提の元一人一人の役割や責任というものを明確化しようとしています。
現在は新型コロナウイルスの影響により、正解がないところに正解を作り、行動するにも基準を設けなくてはならない状況が続き非常にもどかしく思うところも多々ございます。
ですが、このような状況下であるからこそ、バスケットボールができる喜びや有り難みを、強く感じます。
そして何よりもバスケットボールを楽しみながら、この苦しい状況をチームとしてだけではなく、一個人としても成長していきたいと思います。
引き続きご指導とご声援の程、宜しくお願い致します。
覚悟「5×1のチーム」
ここからは、活動再開にあたり、主将としての意気込みとチームの覚悟について書いていきたいと思います。
弊部では2月の末より新型コロナウイルスの影響で活動を自粛し、バスケができないもどかしさを日々痛感しています。
それと同時に、これまでバスケを当たり前にできていた日々に感謝することができるようになりました。
私は、活動が再開された際には心の底からバスケを愛し、楽しむことができると感じています。
一方で、この自粛期間の中で色々とチームについて考えるにつれて、このままではチームは勝つことができないという危機感が強くなりました。
自粛期間の中で感じたことは、多くの人が自分のためにプレーしているということでした。
でも、これももちろん正解です。
自分が強くなることでチームが強くなれるかもしれないからです。
しかし、私はここで自分に問いました。
「慶應義塾體育會バスケットボール部」は個人の能力を高めることを最大の目的としたチームなのだろうかということを。
私は違うと思いました。
私の考える慶應義塾の強さは「真面目さ、愚直さ、誠実さ」を起因とした「チーム力」にあると思います。
私はこんなに真面目なチームは日本には存在しないと思います(もちろんいい意味で)。
言われたことを忠実に守り、徹底するという点については日本一であると思います。
慶應は「ディフェンス・リバウンド・ルーズボール」という共通理念があるように、徹底的に当たり前のことを当たり前にすることができます。
人が嫌がることをコツコツ積み重ねられる強さが慶應にはあります。
今まではこれで充分でした。
しかし、チームのことを考えていくにつれて、果たしてこのままで勝てるのだろうかと不安になりました。
自分はチームルールを守れているから大丈夫だと安心しきっている人間は、一人もいないと言い切れるだろうかと自問自答しました。
そうして自粛期間のなかで思い悩みながら私は1つの結論に辿り着きました。
それは、「自分のためにチームがあるのではない。チームのために自分がいる」ということです。
先日、あるメンバーがとてもいい言葉を使っていたので引用させていただきます。
それは「1×5の集団ではなく、5×1のチームなのである」という言葉です。
私はまさに「5×1のチーム」こそが、慶應バスケ部だと思います。
メンバー全員で1つのチームなのです。
一人も欠けてはいけないし、不必要なメンバーは一人もいません。
今のメンバーは私がバスケをしていなかったら会うことのなかった仲間なのです。
今私がいるのは周囲にいる仲間のおかげです。
私だけではチームにならなかったのです。
私はこのような当たり前に気づき、当たり前であることに感謝すべきだと思いました。
私は活動自粛中に考えれば考えるほど、自然と普段は当たり前になってしまっていることに目が向き、改めて自分は恵まれていたのだなと、しみじみ感じることができました。
私自身もこれまでは自分自身のためにプレーしていた部分がありました。
しかし、このチームでは個人のためにプレーする必要はないと思いました。
今の私の気持ちとしては、チームメイトのみんなのために勝ちたい一心です。
みんなのために戦いたい。
それは、みんながいてくれなかったら今の私はいないからです。
慶應の強さは「チーム力」にあると思います。
それは、チームのために自分がいるということを認識し、体現するところから始まります。
百花繚乱を目指す
活動再開にあたり、私が考えているチーム像があります。
それは「百花繚乱なチーム」です。
どういうことかというと、一人一人が自分の強みと弱みを明確に認識した上で、自分の役割を全うしているチームのことです。
自分の「やりたいこと」とチームから求められている「やってほしいこと」と「やるべきこと」が見事に一致した状態にしたいのです。
なんでもかんでも自分勝手に自分のやりたいことをするのではなく、この「百花繚乱」の根底には、チームルールを徹底するという守破離の「守」の部分が必要です。
「百花繚乱」は、チームルールを徹底的に守った上での話です。
今後は守破離の「破・離」を求めていこうと考えています。
しかし、これはとても苦しい過程になると思っています。
なぜなら、「守」は正解がはっきりしていてみんなが同じことをやっていればそれで良かったのに対し「破・離」は正解がなく、自分で正解を作っていかなければならないからです。
まさに、今のこの前例のない新型コロナウイルスの影響による自粛期間の中で、正解がない状況に悪戦苦闘する状況と同じようなカオスが生じるため大変苦しい過程になると覚悟しています。
正解を選ぼうとするのではなく、選んだ選択肢を正解にしなければなりません。
これには判断基準が曖昧な部分が多く出てくると思います。
自分で自分の軸がないと、振り回されて必要以上にもがき苦しむことになりかねません。
だからこそ、今一度自分がこのチームにいる意味は何なのか、なぜ大学生にもなってバスケを続けるのかといった目的意識やモチベーションの根本を問いただすことが必要になってくるのです。
そしてそれと同時に、自分の強みは何なのか、チームから求められている役割は何なのか、という部分で周囲とのすり合わせも必要になってくると考えています。
このように、活動再開後はかなりの困難が出てくることが想定できます。
私は活動再開にあたり、チームのメンバーにその困難と真正面から向き合って、仲間と助け合いながら乗り越えていくという「覚悟」を持ってほしいと思っています。
また、実際に「覚悟」を持つことを求めていこうと考えています。
これまでの基準は低すぎます。
これではとても勝てません。
まずはチーム内での基準を上げていくつもりです。
これについて来られない人は置いていく覚悟です。
厳しいことをするようですが、それぐらいしないと勝てないのが現状だと思います。
私は、求心力をこれまで以上に上げていきたいし、メンバーにはついてきてほしいです。
そして、個性を存分に発揮して百花繚乱なチームができれば、個では勝てない相手でもチームとして戦えば勝てるという、チームスポーツの醍醐味を体現することができると考えています。
最後に
慶應は監督やコーチからのトップダウン型の組織ではなくて、学生主体でみんながフラットな立場から意見を言い合えるのが大きな強みであり、楽しさです。
みんなの叡智を集結させて壁を乗り越えていくことに学生スポーツの楽しさは詰まっています。
どうせやるならやりきります。
そのために、今一度自分と向き合い、仲間の声に耳を傾け、自分の考えを積極的に発信しようと思います。
ようやく活動再開の目処が立ちつつあります。
繰り返しにはなってしまいますが、バスケットボールができることに感謝しつつ、さらなる高みへと昇っていきます。
そして、不可能を可能にしていきます。
「最大限の努力により最高の結果を出すチーム」の集大成を見せるつもりです。
長々と当たり前のことを書いてきましたが、私はこの自粛期間を経て、より当たり前のことに目を向けることができるようになりました。
できることを精一杯頑張り、楽しみながらこの困難な状況を乗り越えていこうと考えています。
今後とも、慶應義塾大学體育會バスケットボール部の応援を宜しくお願い致します。