ベンチもコートも宝物 ‐吉田千里

『引退ブログ』

慶應義塾大学理工学部4年ならびに体育会女子バスケットボール部の吉田千里(CN:ルカ)と申します。
この4年間、多くの方のご尽力により、無事に引退まで駆け抜けることができました。
この場をお借りして、感謝申し上げます。

バスケットボールを始めて、10年が経ちました。
ついに引退ブログを書くときがやってきてしまったと驚くとともに、何を書けば良いのだろうかと考えを巡らせています。
やはりバスケットボール人生を振り返るのが王道コースですが、10年分振り返っていては読んでくださる方の瞼も重くなってしまうと思うので、一番印象的だった大学4年間を綴ろうと思います。
10年間の中で大学の4年間はやはり特別です。
プレイヤーとして様々な立場を経験させていただき、様々な感情と向き合ってきました。
私個人の話ばかりになってしまうと思いますが、お付き合いいただけますと幸いです。

ベンチ外でビデオを撮り続けた1年目

大学生になり、高校の先輩の背中を追いかけ、希望と期待を胸に体育会の門をくぐりました。
しかし、そこに待っていたのは甘くない現実でした。
予想していた以上に多い1年生の仕事量をこなすことと並行して、レベルが高くて強度がある練習についていくのもギリギリで、毎日疲弊していました。
私は、弱小校だった中学、高校ではキャプテンでエースでした。
人数も少なく、私がいなければ練習も試合も成り立たないという気持ちを持って部活動に励んでいました。
ところが大学に入ると、私がいてもいなくても変わらない、そんな感覚に陥り、そのギャップに苦しい思いをする時期がありました。
コートに立つAチームの人たちを見て、ここに入れる日は来るのだろうか、4年間このまま終わるのではないかと珍しくネガティブな気持ちばかりが沸いてくる日々もありました。
その中でも頑張れたのは、同期のおかげだと思います。
1年生からコートに立つ同期も、私と同じような立場の同期もいて、みんなで助け合って(助けてもらったことの方が圧倒的に多いですが)なんとか乗り越えられました。
そんな日々を過ごしながら、秋になってリーグ戦が始まるとスカウティングやビデオなど、目に見えてチームに貢献することができるようになり、ようやく自分がこのチームの力になれているかもしれないと感じられるようになりました。
ベンチ外でビデオを撮っていたリーグ期間でしたが、完璧なビデオを撮ることをモチベーションに裏方に徹して、コートに立つ先輩や同期の勇姿を目に焼き付けました。
シーズンが終わるころ、新品同様の試合用の靴下を眺めながら、来年こそはコート上で戦力になるんだと気合を入れました。

1年生のときのお決まりポーズ

ベンチを温め続けた2年目

選手の人数が減ったこともあり、2年生ではベンチ入りすることができました。
しかし、コートに立つことはほぼなく、ベンチでチームを盛り上げることが私の役割でした。
声出しは私の得意分野で、その役割にやりがいを感じていましたし、チームに必要な存在であったと思います。
しかしコートに立てない理由を、「1年生だから仕方ない」と自分自身に言い聞かせていた私には、2年生になっても練習内の5on5にすら出られない状況は悔しいものでした。
後輩がコートで活躍する姿は、嬉しい気持ちと焦りと悔しさと様々な感情がぐちゃぐちゃになって、とても複雑でした。
1年生の頃から、自分は成長しているのだろうか、この1年何をやっていたのかと考えては、「まあどうにかなる」と気持ちを落ち着けて、またコートの外から声を出す。
そんな日々を送りました。
どうしたら成長できるのか、コートに立てるのか、よく分からないまま2年目を終えました。

少しずつ試合に絡めた3年目

新しいヘッドコーチを迎え、新たな体制で始まったシーズン。
私は今年ダメだったら、4年生まできっとコートに立てることはない、そう感じました。
だからこそ、きっとチームの誰よりもやる気も声も出して、頭を使って練習に臨みました。
そのやる気が実って、3年目にして初めて早慶戦や慶関戦のコートに立つことができました。

とはいえ、AチームとBチームの狭間という不安定な立ち位置です。
些細なミスをすることでほかの人と交代することになり、Aチームとしてコートに立てないという状況になってしまいます。
そんなことが何度もあったので、春シーズンは今まで感じたことのない感情を抱き、メンタル的に苦しいこともありました。
同じポジションの人が今まで以上にライバルに感じ、自分の嫌な部分が見えて自己嫌悪に陥る日もありました。

それでもヘッドコーチと話すうちに私に求められていること、私がこのチームに貢献できることがはっきりと形になって見えた気がします。
今まではただがむしゃらに頑張っていたけれど、自分の役割がはっきりすることで、特に頑張るべきことが明確になり、練習にも取り組みやすくなりました。
夏合宿ではそれまで積み上げてきたものが練習試合で発揮され、これでいいんだ、間違っていなかったんだと個人として大きな自信につながりました。
リーグ戦では大事な試合でもコートに立つ時間が増え、自分自身で自分の成長を感じ、もっともっと上手くなりたい、バスケットボールが楽しいとポジティブな気持ちが増えていきました。

自信に繋がった合宿

シックスマンとしてプレイで貢献できた4年目

今年はAチームに定着し、試合の重要な場面でコートに立てるまでになりました。
シックスマンと書くと、スタメンに惜しくも入れなかったのかと思う人もいるかもしれません。
しかし、私はこのシックスマンという立場が一番自分らしくて、自分の強みをチームのためにいかせるものであると感じ、誇りを持っていました。
チーム状況によってスタメンが変わることもあり、今までの自分だったらなんで自分はスタメンになれないのか、と考えていましたが、今年の私は誰がスタメンでも私は自分の仕事をするだけ、と自分の置かれている立場で120%の力を出すことだけに集中することができました。
自分の役割が明確になり、どんな状況でもそれを遂行するだけ、と考えることができるようになったおかげでいいパフォーマンスをすることができるようになりました。
その結果、早慶戦では1部相手にスティールを記録することができ、慶関戦では大事な場面でリバウンドを取ることができました。(私の役割は泥臭く頑張ることで、点を取ることに重きを置いていないので、スティールとリバウンドを上げさせていただきました)
3年ぶりの慶関戦勝利もあり、自分自身もチームとしてもとても自信をつけることのできた春シーズンでした。
慶関戦に勝ったことで多くの方に期待していただいて、自分たちの覚悟も大きくなりました。
ベンチ外も、ベンチも、コート上も経験してきたからこそ、コートに立てるありがたみも、コートに立てないチームメイトの気持ちも人よりは感じていたつもりです。
そのため、コート上では絶対に100%以上のプレイをしてやるんだと思っていました。

しかしリーグ戦が終わってみれば、2部昇格どころか、入替戦にもいけず、3部5位という結果にとても悔しく申し訳ない気持ちです。
今でも勝てたなと思う試合もあります。
結局何も変わらなかった、結果だけ見ればそう思われても仕方ないと思います。
しかし、今年のチームは去年と比べて確実に成長したと私は思います。
もちろん詰めの甘いところ、気持ちで負けてしまったところ、まだまだ伸び代があってそれらを克服できなかった部分は多くあります。
それでもチーム全員が勝ちに向かってひとつになった瞬間は忘れることはできません。

チーム一丸で戦ったリーグ戦

ここまで4年間を振り返ってきましたが、こんなにも色々な立場でチームに関わらせていただけることはなかなかないことだと感じています。
もちろん辛いこともたくさんあったけれど、ここまで歩んできて振り返ると、幸せな4年間だったと思います。
自分の役割があることがどれだけ自分の力になり、誰かのために頑張ることができるようになるのか知ることができました。
また、この部活に入ったおかげで出会えた人がたくさんいて、自分の成長を感じ、これからの人生の糧を得ることができました。
真剣に何かに打ち込める環境があり、一緒に歩んでくれる仲間がいて、それをサポートしてくださる方がたくさんいる。
そんな場所で最高の4年間を送ることができて、本当に幸せ者だと思います。

大好きなチームのみんなありがとう

これだけ長く書いておいてまだまだ伝えたいこと、書きたいこと、書ききれていない気がしますが(文章が得意でないのでお許しください)ブログではこのくらいにしておきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

同期愛だけは誰にも負けません

いつも温かいご声援、サポートをしてくださったOG・OBの方々、未熟だった私を見捨てず育ててくださった先輩方、こんな私にもついてきてくれた後輩達、どんな時でも一緒に乗り越えてきた同期、私を信頼してコートに立たせてくださったコーチ陣、バスケットボールを通して出会った仲間達、毎日サポートしてくれていた家族、関わってくださったすべての方々に改めて心からの感謝を伝えたいです。
これからは与えていただいた分を少しでもお返しできるように頑張っていきたいと思います。
本当にありがとうございました。

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