「ツかせてくれた存在」-井手友美

慶應義塾大学理工学部4年ならびに体育会女子バスケットボール部の井手友美(CN:リョク)と申します。拙い文章ですが、最後まで読んでいただけると幸いです。また、私の性格上、時が経つにつれ思い出が美化されていくため、少々前向きな思い出話がメインになることをご了承ください。

最後の1年はとにかく濃く、あっという間に過ぎ去りました。まず、慶関戦。“勝った。うわー勝った。”としみじみと勝利を噛み締めて、今シーズンが始まったような気がします。4月には春のトーナメントが行われましたが、正直、新チームが発足してからトーナメントまで、あまり記憶がありません。インパクトの強い早慶戦やリーグ戦によって上書きされたと言いたいところですが、実際は自分がチームに対してできたこと、達成したことがなかったからだと思います。情けないのですが、最上級生になったにも関わらず、この頃は目標達成に向けた気持ちが入りきっていなかったのかもしれません。

5月には慶関戦がありましたが、特に覚えているのは湿気で体育館の床がよく滑ったこと。滑りながら全身を使ってボールを自分のものにするチームメイトをとても誇らしく思いました。慶関戦で勝利したとき、このチームでもっと勝ちたい、その勝利に貢献したいとやっと気持ちが入ってきたように思います。

7月になり、早慶戦の日を迎えました。とても暑く、スーツを着ることが耐え難い日でした。代々木体育館は思ったより何倍も観客の方々との距離が近く、圧倒されました。1年生のとき、幸いにも早慶戦の舞台に立つ機会を頂きましたが、大勢の観客の中、ミスしないように消極的になり、ただチームメイトにパスを回すことしかできませんでした。それから3年、4年生としての早慶戦では観客の迫力に圧倒されながらも「この舞台で格上の早稲田とバスケができるのに怖気づいてたらもったいないな、自分ができることを全うすればいい。けれども、あわよくばいいプレイを魅せたい、あわよくばこの大舞台で得点に絡めたらいいな」と、挑戦心と平常心、そして小さな野心をもち、いい意味で軽い気持ちで挑むことができました。立場の問題かもしれませんが、この4年間で精神的に少し成長できたと思わせてください。

成長を感じられた早慶戦

そして、夏合宿。4年間で最も学びが多かった期間でした。学びが多かったと断定したからには学んだことを言語化しようとしても、何を学んだかを具体的に言葉にするのは難しいですが、大事な期間であったことは間違いありません。たしか合宿中、常に”よし、やってやるぞ”という気持ちで過ごしていたような気がします。その日できなかったことの改善策と新たな課題を考えて、その語尾に”よし、やってやるぞ”と。もちろん、こう思っていてもできないことばかりではありましたが、普段より強気でバスケをできたように思います。早慶戦といい、合宿といい、強気な姿勢でいることがもしかしたらパフォーマンスを向上させる源だったのかもしれないとこのブログを書いている今、気が付きました。

学びが多かった合宿

合宿が終わるとすぐに、リーグ戦が始まります。3年生のときは仮想の相手チームとして練習に臨むことが多く、対峙するスタメンの皆が、リーグ戦で試合を重ねるごとにシュートの確率やパスの精度を高めていく姿を目の当たりにしました。私はそれに歯が立たず、不甲斐なさを感じることが多くありました。とにかく食らいつこうとしましたが、当時は何の成果も出すことはできませんでした。4年生になりリーグ戦開幕が近づく頃、自分もあのときのスタメンの皆のように、リーグ戦に対する熱意を表したいと思いました。3年生当時は自信がなくなりかけていましたが、あの環境でプレイし、スタメンの皆、特に先輩のリーグ戦への向き合い方を体感した経験を無駄にしないように奮闘しました。実際にできたかは別として、そう思えたことでリーグ戦に向けた心構えができました。

リーグ戦は多くの方々に支えられて、突き進めたと思います。自信がつくような言葉、鼓舞してくるような言葉、今でも1つ1つ思い出すことができます。なかなか自分のプレイに絶大なる自信をもつことができなくても、そのような言葉をかけてくれる方々の期待に応えたい、失望させたくないとそのような思いで戦うことができました。しかし、納得のいく結果とはならず、実力不足をただただ感じました。順位決定戦が終わったあと、同期と自分たちが目標としていた入替戦を見に行きました。元来、プロのバスケの試合さえ見ないのですが、この入替戦は絶対に見たいと思いました。リーグ戦で戦った相手がどのような戦い方をするのか、2部との差はどのくらいあるのか、それを確かめたかったのだと思います。そこで自分たちが戦った相手が2部のチームに勝つ姿を見て、もし入替戦に進めたらチームとしてはいい勝負ができたのかもしれないと思うとともに、個人としては全く通用しないのではないかと心のどこかで思ってしまいました。この弱さがリーグ戦後半、大事な場面でもシュートを決められないことに繋がっていたのだろうと思うと、まだまだ覚悟が足りなかったと気づかされました。このように、怒涛のようにリーグ戦は終わってしまいました。無念さが残りましたが、その後の六大学対抗戦では目一杯愉しもう、と気持ちを切り替えるようにしました。

話は変わりますが、合宿前、私は人生最後となるであろうバッシュを買いました。自宅に届き、箱を開けるとバッシュとともに1枚のカードが入っていました。(同じ時期に違うものも通販で頼んでいたため、もしかするとそちらに入っていた可能性はありますが、、)そのカードには「ツイてる ツイてる。」と誰の言葉かもわからないことが書いてありました。私の4年間の大学バスケはこの言葉で語れるような気がします。最後の1年間も、私の気持ちや考えは過去の経験だったり誰かの行動や言葉に感化されることが多く、自分はツイていると思わせてくれる方々が周りにいること、またこの環境に自分がいられたことはとてもツイていたと感じます。

他にも、高校の先輩、友達がいたから体育会という存在を知れたこと。ガードの先輩後輩の姿を見て、ガードというポジションに誇りをもてたこと。コートに立つ機会を多く頂いたこと。ここぞというときにOG・OBの方々、スタッフの方々から激励の言葉をいただき、奮起できたこと。最後の1年、合宿やリーグ戦に尽力できたこと。挙げるときりがありませんが、バスケを通じて関わってくださった皆さま、ツイてると思わせていただき、誠にありがとうございました。そして、最後までバスケを一緒に愉しみたいと思わせてくれた同期と巡りあえたことは心からツイてると思います。ツかせてくれてありがとう。これからもどうぞツかせてください。

ツイてると思わせてくれた環境

OG・OBの皆さま、スタッフの皆さま、これまで多大なるご支援をいただいたこと、深く感謝申し上げます。慶應義塾大学体育会バスケットボール部の部員だったことを誇らしく思います。ありがとうございました。